コラム

ファシ講師インタビュー:「特別講座に込めた“will & skills”by 冨岡武&森雅浩」その1<そもそも編>

2013.10.17

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「本当に大切なことは自分たちで考えよう」というファシリテーションを続けて10年が経ちます。その最初の一歩として「言葉の意味」を丁寧に扱うことを大切にしてきました。”

と語る、トミーこと冨岡武さん。今回の特別講座の原点となる体験と、そこからの実践を聞きました。ファシリテーションの実践を重ねる皆さんへの気づきとヒントになれば幸いです。(聴き手:森雅浩)

そもそも編

モリ: まずは、今回のテーマの「言葉の意味」にこだわるようになった“きっかけ”を聞きたいよね。トミーが「自分たちで答えをつくる」や「皆でいい結果を生み出す」ことの伴走者として、多くの現場に携わってきた中で、「曖昧さ」が問題として意識されたのは、どんな時だったの?もしくは、言葉の意味が曖昧なまま、話し合いが進んでいる場面がそんなに多くあったんだろうか?

トミ:  講師陣の共著『ファシリテーション 実践から学ぶスキルとこころ』に、会社のビジョンをつくる合宿を事例に書いたけど、あの頃には既に実践していたよね。注   実は、僕が言葉の定義ついて考えるようになったのは、ファシリテーションを知る以前の、自分自身体験がもとになってる。コンサルタントに転職した時のボスが「コンサルタントはこうでなければ」とか「マネージャーとは~だ」というような、言葉の定義をよく語る人で、僕は、それを一生懸命叶えようと、言葉の通りに実践しようとしていたんだ。例えば「マネージャーは人を育てなさい」とかいうようなものをね。それは、そのボスがつくった、ある意味、その人自身の組織の中での価値観だったと言えるんだけど、次第に自分の中に実践できることと、できないことが出てきた。その辺りから「自分にとって“育てる”とは何なんだろうか」なんて定義することを始めたんだ。

モリ: つまり、ファシリテーターとしてというより、自分自身の仕事において、言葉の定義が曖昧だから上司に答えられないとか、組織の中で上手くいかなかったりした自分の経験が最初にあったということだ。

トミ: そう。それともう一つ、お客さんから「コンサルタントっていいよね」と言われた経験あって。まだ駆け出しのコンサルタントだった頃、ある提案のメリット・デメリットを説明した後に「コンサルタントってメリット・デメリット説明すれば終わりだけれど、現場はデメリットがある限り実行できない。メリットの最大化は期待するところだけど、デメリットを最小化するのもコンサルタントの仕事じゃないのかな?」と問われたんだ。自分がプロとしてありたいコンサルタント像に対して、その人が期待するコンサルタントの定義を示された訳だけれど、そのズレが全くその通りで、本当に顔から火が出るくらい恥ずかしかった。そうやって、お客さんから曖昧な、独りよがりな定義でいきがっているところをズバっと指摘されて、気づきを得た。一人ひとりが持つ言葉のイメージがあって、それが明確な人と曖昧なまま使っている人は違うなって。僕の周りにいた「仕事ができる人」は皆、それが明解だったんだ。

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モリ: それで、トミーがファシリテーター型・コンサルタントというか、コンサルタント・ファシリテーターとして色んな他の人の場面に関わるようになって、言葉の曖昧さが問題のベースになっていると気づいたのは、今話したような自分の経験があったから?

トミ: 今の話は、僕がファシリテーションを全く知らない時期の気づきで、自分の言葉と行動はすごく意識するようになっていたものの、まだファシリテーションのスキルとは直結してなかった。そこに自覚的になったのは、やっぱり本にも書いたビジョン・ワークショップの時かな。

あとは、言葉の定義から、少し外れるけど「これは問題です」という時の「なんで問題なのか?」の捉え方が結構ズレていたりすることが多くある。例えば、ある取締役クラスのワークショップで「この問題について、信号の色で何色かイメージして下さい」と訊ねたら、人によって黄色だったり、真っ赤だったり。 次にその理由を書いてもらって共有すると、それぞれ一理あるんだけど、問題の定義の仕方がズレてるんだよね。実際、そういうところからファシリテーションに入っていくことって結構ある。

その問題のズレをもう少し小さいレベルにしたのが、言葉のズレなんだけれど。だから、問題解決のファシリテーションをやって行く中で、言葉の定義から入らないとスタートできないとか、話し合いの時の噛み合わなさは、実は言葉のズレだと、意識するようになっていったんだと思う。

 

<実践編につづく、、、 2013年10月24日(木)更新です>